2010年 03月 08日
いわき文音四吟歌仙『陽だまり』の巻 宗海捌 起首 2009.11.21 満尾 2010.03.03 発句 陽だまりに幼子遊ぶ落葉かな 笑女 三冬 脇 木枯止んだ午後の縁先 禿山 初冬 第三 ふるさとはボジョレイの宴華やかに 宗海 初冬 四 スナップ写真ちょっとピンぼけ 女 雑 五 封切りの映画に酔へば昇る月 山 三秋/月 六 煉瓦通りに涼新たなり 海 初秋 裏 折立 洋館の庭にひらりと秋の蝶 女 三秋 二 布教し続け早や二十年 山 雑 三 老眼が兆して滲む辞書の文字 海 雑 四 かはたれ時にすれ違ふ人 遊糸 雑 五 楽しげな笑ひの声にときめいて 女 雑/恋 六 座席に残る淡き移り香 山 雑/恋 七 青野行く路遙かなり汽車の旅 海 三夏 八 粋な浴衣で宿の月見る 女 三夏/月 九 箸置に跳ねる兎と波二つ 糸 雑 十 グルメガイドに選ぶひと品 海 雑 十一 峰白き酪農の地は花の時 山 晩春/花 折端 揺れるふらここ宇宙への夢 糸 三春 名残表 折立 公園で龍馬伝読む春日和 女 三春 二 千代見習へとせびる小遣 山 雑 三 新機種も半年後には次が待つ 海 雑 四 成人式は母の振袖 女 新年 五 告白を心に決めるけふこの日 糸 雑/恋 六 君がまぶしいライブ打上げ 海 雑/恋 七 オフシーズン北のドームは模様替へ 山 雑 八 気球に乗って大地見下ろす 糸 雑 九 植ゑ付けし畑一面深緑 女 雑 十 友の土産に買ふずんだ餅 山 雑 十一 湯の町を歩めば月は天心に 海 三秋/月 折端 木の実時雨の乱す池の面(も) 女 晩秋 名残裏 折立 どぶろくはさあ飲み頃とのぞく甕 糸 晩秋 打越から二つ続いた秋の季をもう一句続けます。「どぶろく」が晩秋の季語。前句の波立つ水面の場面からこの液体が発酵する様子へと連想をはたらかせて転じたもの。会話体も軽妙な味を出すのに効果を上げています。 二 二年ぶりにて戻る出稼ぎ 海 雑 前句の人物を、夫の帰りを首を長くして待つ妻と見定めて、その夫の立場で付けたもの。このように別の人物をもって前句に対する手法を「向付(むかいづけ)」と呼びます。 三 着飾って父祖の地で舞ふフェスティバル 山 雑 前句の「戻る」から「父祖の地」を引き出し、これを「付所(つけどころ)」として華やかな雰囲気へと付合の流れを変えました。 四 曳く声高く手繰る鯛網 女 晩春 「鯛網」が晩春の季語。前句の「父祖の地」を瀬戸内海あたりの沿岸地方と見定めて、前句の祭の賑わしさに位を合わせて大漁の場面を詠んだもの。 五 独居に花の香添へて届くふみ 糸 晩春/花 名残裏の五句目は「花の定座」。ここは新たに参加された糸遊さんへの歓迎の意を込めて、「花を持」って頂くことにしました。前二句の賑やかな世界から一転して、独り住まいのご老体に手紙に添えて届けられた香りの高い花の句です。 挙句 のどかな午後に雑巾を縫ふ 山 三春 いよいよ挙句。前句の人物が春の日差しを浴びて縁側で雑巾を縫う姿が、挙句にふさわしくさらりと詠まれています。これにてめでたく一巻の満尾を迎えました。 *撮影機材:R-D1+SUPER ROKKOR45mm f2.8 *撮影地:東京浅草
by YOSHIO_HAYASHI
| 2010-03-08 06:32
| 詩歌管弦
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