2006年 05月 04日
『日本方言大辞典』は、各地で編まれた方言集を主要な資料としています。 ここでは原資料名を一々挙げませんが、それらのなかから、津軽地方で採集された《台所》関連語彙を整理して語義別に示すことにします。 《台所・炊事場》 「みじゃ」 《台所の流し・流し場》 「みずや」「みじゃ」「みんじゃ」 《流し元のあたり》 「めんじゃもど」 《流し場に据える台》 「みんじゃ・めんじゃ」 このほか、前回のコメント欄に記した桜子さんから教えていただいたサイト「弘前の津軽衆」の「津軽語辞典」のページにも、《台所・キッチン》の意を表す方言として「めんじゃ」が挙げられています。 すでにお気付きでしょうが、これらの語形の源はすべて「みずや(水屋)」にあります。 「みじゃ」は「みずや」の縮約形、「みんじゃ」は、その「みじゃ」の[ジャ]の音節が、津軽弁では鼻音性を帯びて[ミンジャ]のように発音されることから生まれた撥音添加形、さらに「めんじゃ」は、「みんじゃ」の語頭音節母音[i]が[e]と交替して生じた変異形と見ることができます。 ちなみに、上記の「津軽語辞典」には、「めんじゃ」について次のようにあります。 >水屋がなまったものだと言われるが、女座「めざ」が訛ったとの説もある しかし、ここに一説として引用された「めざ(女座)」なる語については、その存在自体が疑わしく、文献・方言のどちらの資料からも、これが実在したという確かな証拠を得ることはできません。 こちらは思い付きの域を出ない憶説として退けるのがよいでしょう。(この項続く) *撮影機材:R-D1+SUMMARON MLmount 35mm f2.8
by YOSHIO_HAYASHI
| 2006-05-04 08:09
| 言語・文化雑考
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