2006年 09月 15日
「しか」はその強調形「しっか」を含めて、単独で用いた例を探し出すのは困難で、「しかとは知れぬ」などのように「と」を伴って用いられるのが通例です。 反復形の「しかしか(と)」は、現代では死語と化していますが、歴史的には鎌倉期から江戸期にかけて《確かに》の意を表すのに用いられました。13世紀初めごろの成立と見なされる、鴨長明の編んだ説話集『発心集(ほっしんじゅう)』には次の例が見えます。 しかしか其の日めのとの許(もと)へ行き逢ふべき事、よくよく定め契りて帰りぬ。 ところで、この「しかしか」とは別に、物事を具体的に言わずに「かくかくしかじか」のように用いられる「しかじか」があります。 こちらは後半の語頭が濁音ですから、上記の「しかしか」とは別語のように見えますが、これが濁音化したのはかなり後の時代のことで、本来は「しかしか」の形が用いられました。 前にも引用したことのある、J.C.ヘボンの編んだ和英辞典『和英語林集成』初版(1867)には次のようにあります。 SHIKA-SHIKA, シカシカ, adv. So and so, and so on. (used in the place of something omitted) -to kataru, he said so and so. 語義解説と用例文の「シカシカト カタル」に照らせば、この「しかしか」が現代語の「しかじか」であることは明らかです。なお、この見出し語の頭には、それが"廃語"(古語)であることを示す記号(†)が付いているので、当時はすでに日常語の世界からは姿を消していたようですが、第三音節はいまだ清音として発音されていたことが注意されます。 このところの雨続きによる材料不足のため、今日も8月末に吉祥寺で撮ったスナップ写真をアップします。 *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm(SC) f1.4
by YOSHIO_HAYASHI
| 2006-09-15 08:07
| 言語・文化雑考
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