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2007年 08月 13日
季語あれこれ -昼寝(3)-
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芭蕉の「昼寝」句の例をもう一つ取り上げます。

  窓形(まどなり)に昼寝の台や簟(たかむしろ)    芭蕉




「俳諧七部集」の第五集、『続猿蓑』の「夏之部」に、「雑夏」の題で収めるものの一つ。「晋の淵明をうらやむ」の題詞が添えられています。

元禄七年(1694)五月十四日付で芭蕉に送られた去来の書簡に、師の前年の作として、他の句とともにこの句が記されているところから、同六年夏に詠まれたものであることが知られます。そちらは中七が「昼寝の茣蓙(ござ)や」とあり、後に上記の句形に改められたものと思われます。

句意は、《風の通う北窓の下で、太古の理想世界の人になったような気分で昼寝を楽しんだという、中国の詩人陶淵明(とう・えんめい)にならって、自分も窓沿いに寝台を置き、竹で編んだ筵(むしろ)を敷いて昼寝をしながら、そのような安らかな心持ちになりたい》というほどのもので、「簟」が三夏の季語にあたります。

この句もまた、「昼寝」を夏の季語と見なすと「季重(きがさなり)」が生じてしまいます。

なお上記の『続猿蓑』には、他にも同じ「雑夏」の題で昼寝を詠んだ次の二句が収められています。

  昼寝して手の動き止む団(うちわ)哉           杉風
  粘(のり)ごはな帷子(かたびら)かぶるひるねかな   惟然


これらの句でも、それぞれ「団」「帷子」が夏の季語にあたるので、上記と同様のことが言えます。ちなみに、杉風(さんぷう)句の「団」は「団扇」の誤りではなく、当時の通用表記法。惟然(いねん)句の「粘ごはな」は「粘強な」、すなわち《糊のよく利いた》の意を表す語です。

このような例に目を向けてみると、すでに先人が指摘するように、芭蕉の時代には「昼寝」は夏の季語ではなかったことがよくわかります(この項続く)。

今日はチビトラたちは姿を見せませんでした。最後の画像のモデルは二枚目左手前の中トラです。なんだかマグロの"中トロ"みたいな呼び方ですね(笑)
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  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)

by YOSHIO_HAYASHI | 2007-08-13 08:15 | 言語・文化雑考


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