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2008年 12月 01日
「鍍金(メッキ)」について (1)
11月29日の記事の後に、ちがや丸さんから次のようなコメントを頂きました。



生物に近い領域でも神経を顕微鏡で観察する時に、鍍銀法(とぎんほう)というのを使って微細な構造が見えるようにするので鍍金(ときん)という言葉には違和感は持たないのですが、メッキと読むというのはひじょうに不躾なことばの使い方のような気がしました。

この件に関して、「鍍金(ときん)」がなぜメッキと読まれるのかという問題を取り上げたいと思います。

「鍍金(メッキ)」について (1)_f0073935_17224692.jpg「鍍金(ときん)」という語は、きわめて薄い金を銅製などの器物の表面にかぶせる意を表すもので、中国では唐代の李紳(りしん)の詩の中に、すでにこの漢語が用いられています。

日本ではこの漢字表記がいつごろから使われるようになったのか、定かではありませんが、遅くとも江戸中期にはその存在の確認されることが、左の画像から明らかです。

これは、以前にも引用したことのある意義分類体辞書『書言字考節用集』(1717年刊)の第七巻器財門のメ部に収める語彙の一部の画像です。

この1行目末にある「鍍金」に「メツキ」の振り仮名が施されています。また、これに続く2行目の「滅金」の右側にも、同じ読みを示す「」の字の見える点も注意されます。

ここでさらに注意されるのは、この語がトの部にトキンの読みで収められているのではなく、メの部にメッキとして収められている点です。

これらのことから、18世紀初頭にはすでにメッキという語があり、その漢字表記として「鍍金」と「滅金」の二つが用いられていたことが知られます。 (この項続く)

by YOSHIO_HAYASHI | 2008-12-01 17:25 | 言語・文化雑考


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